震災後に生まれ、大人になる君へ伝えたいこと

津波で大きな被害を受けた岩手県大槌町。
かつて町があった場所はかさ上げ工事のために土に埋もれようとしている。
この町で生まれ育った映画作家は、震災後に生まれた姪に向けて、彼女が大人になる頃には見れなくなる風景について映画で伝えようとする。


風景の記録映像で構成された53分の町の記憶

監督は2011年に『槌音』を発表した大久保愉伊。

彼が生まれ育った大槌町の風景と記憶を、未来の姪に向けて作ったビデオレーターのようなドキュメンタリーが本作『ちかくてとおい』である。
本作の主役となるのは様々な時期の大槌の風景。
震災前の町並、震災直後の変わり果てた町の光景、草花が住宅の基礎を覆う夏の景色、町の跡を練り歩く祭り。
現れては消えていった風景の映像に、震災後に生まれ、大人になる姪に向け、町の記憶やメッセージが監督自身の声で語られる。
「2041年あなたの目の前には、どのような町並みが広がっているのだろう? そこではどんな景色が見え、どのような音が聞こえるのだろう?」
インタビューもなければ、登場人物もいない。
ある日突然消えていった風景から、これから生まれる風景を想像させる映像詩。

本作の舞台・岩手県大槌町

岩手県陸中海岸から少し南に位置する。面積200.59平方キロメートル。
人口12,255人(平成29年2月28日現在)。町の花/新山つつじ、町の鳥/かもめ、町の魚/鮭。海、川、山に囲まれた自然豊かな漁業の町。
東日本大震災では大津波が到来し、壊滅的な被害を受けた。
宅地や市街地を中心とした「建物用地」面積に占める大槌町の浸水率は県内最大の52%と発表されている。
浸水した地域ではかさ上げ工事が行われ、現在、住宅が建ちはじめている。